(無題)

電車酔い
窓の汚れ

(無題)

門がまえの書き順をいう声が生まれないように
空気を抜いてもいいから生まれないように
保存されることに目をつぶって
誰が誉めてもはらって
サザエさんのオムライス
ホットカーペット
風呂場のあみ戸
四十歳の十代。

(無題)

白いグラウンド、空中ブランコのポーズ、広い意味で 仲間の声

(無題)

覚えていたくなどない、
覚えのたしかにある、
足の冷たさ、
外の明るさ

台所に立つ母のすがたを浮かべながら穴の空いた蓮根を剥くみたいに
はさみで切ったA4を貼り合わせたクリップボードを思い出す

映像

連続写真の波紋みたいに平されなかったコンクリートの弧
ダブルピース
5℃ 72%
鼻をつつく父


みきがおじいちゃんの世界で一番好きな人やけな

地平線そか

ペンの掻ききずくらいの
丸テーブルの墨跡くらいの
寒く暑い小屋の指を切った作業台
の雲

(無題)

炭に白を混ぜたアスファルト
白い丸石

()

窄んだ花びらを揉んで 指が湿るのに気づかない

(無題)

からすのいぬが踊っていて、あれはからすのいぬだよ、と教えてもらった

(無題)

いつになったらシャワーヘッドからボディーソープの泡がふきだすようになるのかな
温度と湿気と平滑度のこと

(無題)

靴下の丈に何の思い入れもないから  が悔しいんやろ

そんな難しい話じゃない

()

赤い中国茶
回る氷
細いワイヤー
黄色い画用紙
階段


授業まであと49分

蒸留酒 きいろくてふとい鯉が尾をふる

(無題)

お腹がすいたから元気がない

あのくるくるした蔓の赤ちゃんみたいな光らない光沢
べつに柔らかくないけどいつも柔らかいパーマ

(無題)

名前の引力は地球の10倍

37/15

まのびした壁に掛け時計。

つごうの良い信頼を掴んで死なないように顔を濡らして

[メ

強風は気が滅入るけど、幼女の声は東京
わたしいつかあの高低差をドラマだと思うか

とがった肌
砂の熱

へその緒

おいる とか しぬ を となりに透かしみる
そういうものだとおもっていました

(無題)

海に帰りたい
誰のことばかあやしいそれ

少女

濃くも薄くもない眉とか
暗いところで本を読み過ぎた目とか
車のいない港町の車道
凪いだ運動場
蟹の水槽の前でこけた頬
バイパス沿いの芝生の丘
保健室のカーテン
伸縮する星空

(無題)

そのレビュー

名のついたもの

たしかに言葉にならないそれを わたしは

音と音のあいだ
ならない鍵盤の厚み

風景

葉脈に潜りこんだ吸湿剤で枯れていく言葉
溢れたそれでふやける脳

(無題)

擦りつけて写しとっておかないと
せめて染みをつけないと
体積だけのこる15歳の呼吸
25歳の脈動

(無題)

濡れてやけになって油まじりの水がはねて泥を飲まして胸の星が腫れ上がりすぎて髪をかき乱して雨だか体液だかわからなくなってそうやって

そうやって

はやくどこかへ帰りたい

生まれた

聞き飽きた声に包まれる日はなぜか絶対にある
空気がとまる、繊維のすき間に
でも梁に落ちる影が黒くて美しい今日。            星に引かれる。

50%

歩いて15分で相模湾。
車道向こうのインドカレー屋。
高い赤い壁にのれんに油の点々。
白くてたいらな壁になめらかな瓦みなみなお綺麗。
コーヒーの香り、麻袋、川底は10センチ。
日焼け、母。

そして多分あれは、佐賀か熊本のあたり。
それか茨城県。
白い大きなマンション。
わたしの同級生。
わたしの家族。
別棟とヘッドランプ。
青い空気。

函館。
坂。
海胆。
倉庫のようなあれ。
隠れた雲丹獲り。
縁石を越えて、新しい街をわたることもある。

ドイツ。
木。

スウェーデン。
地下道。

鳥取。
出雲。
釧路。
神戸。
名古屋。
山奥。
台中。
庄内。
わたしを
かためて









孤独の顔

分厚いエアバッグが一生、肌と地面を合わせてくれない。

それが わたしの

あなたの体のあらゆる先は可愛らしいかたちをしている

(無題)

夏休み前のセーラー服がスクリーンの中のわたしみたいに 記憶の中の空中庭園は、白い団地
17歳は黙っている
エアコンが効きすぎて寒い

去来

私は自転車を速く走らせられる。
ふたつ、
弓なりのビルの隙間を、森のわきを、
ヘッドランプを、
いちばんおそく、
ほとんど止まったような一時間を
持っていたから、
ひとつに
重なる
寸前
消防署の若い隊員たちが
楽しそうにいちゃついてるのも
嫌いじゃなかったし
しらけ
誰かの気持ちを想像して壁を睨んだり
指をならしたり
絶望したり
口角をあげたり
夜の病院前を歩く時間は
空き地のさきの星は
トンビが
蟹が
夜になると蟹にあふれる街が
サーカスのテントの中が
わたしは、自転車を走らせながら、
いちばんおそく、
ほとんど止まってた
かけがえがなかった、たぶん、わたしだけの
だれのでもない、
ないのかな


















()

感触にできるだけ近い言葉

夢をみては綴る。
ながれこぼれる油も
片あしを入れたぬるい湯も
はち切れんつぼみも
そしらぬ濡れた茎も
喉につもる砂も
崖のロープも
ぼやける提灯も

明日ではない昨日の
ではないある日の

フェーン現象

今日は、どうして戦闘機パイロットを目指さなかったんだろうと思ってる。
言葉とは留めること。

西、カーテン、駐車場

しゃがんでたことおぼえてる。

今日は夕方におきました。

黄色いぼんぼりの水の都。
空気が青い新宿の角。

矛盾は傷口

私は嘘ついてるわけじゃないよ。
新宿の交差点には思い出ができる因縁があるよ。

ほとんど夜

ずっと3つの音が鳴るみたいな
弦の太さが笑えないみたいな
毛布の毛羽と毛羽の間に留まってる空気みたいな
そういう日曜日。
ざらざらの涙が出るんだろうなそういうときは
何にも変わってない
音楽を聴くにも理由がいるし
小学生の歌声だし
薬指の爪が薄いし
手帳に書かれたポエムは忘れられない。
一度言ったことは言いたくない。
青暗い竹藪のそばで
私にだって行くところがある
だって、
嘘じゃねえよ。



















そんなん嘘ちゃ。

月では

ダウンの袖を捲って
高デニールの黒タイツ素知らぬ顔で
これが懐かしい夕暮れだろう。

(無題)

わたしは何を見たか。

だってそれだって、貴女が梁といえば梁だし、
温かくて気持ちよくてsuitableでも他者の鋳型だ。
横向きに刺さる光りすぎる窓も蔓も、そう、その、梁、だって、グレーの格子だって、
切ないくらいちょうどいい白も、薄明るい木目も、うねうねの縞も、
大きくなったわたしの手が掴んで放さない心臓   も、
コーヒーの後味も、
毛糸だらけの脳も、
ほとんど生のため息も、
わたし、これをわたし、鎹にしたいの。

言葉は強いから

弱い言葉を話したい。
あなたが冬の日おでんのタッパーを持ってホームセンターの前に立っていたように、
その白い息が、枯れたベンチの熱い老人にかかるかかからないかの距離だったように。

(無題)

春のにおいがする。

あぶらの縁の色、解れ

外気のくるぶし
濃くてあつくて揺れない堅い葉
嫌いな人を嫌いと言えない否嫌いと言えない心の中でも
虫が大きくて
やたらと真っ直ぐで
なだらかすぎて硬くて
湿気が溜まって
裏切りみたいに本当裏切りみたいに
空気がかわいて
土偶の腹のような    傾いて、
傾いて


いつも濡れているのはわたしだけだし
わたしとて浸透はしない
ごめんね

いま、巻き戻るかな。

夢の友だち

クローバーを踏み抜いたらフジツボの隙間

(無題)

欲望にからだが追いつかない

脳にからだが追いつかない

閃光

赤いスジエビの鎧を着たわたしがいた

白鳥夢

なぜか、切り絵をしていた。
いつか夢みた低くて分厚く広いテーブルに肩から寄せて、
インクジェット用トレーシングペーパーを下絵もなく刻んでいた。

(無題)

ぼんやりとした鉛筆の島が りんかくが 高低差が 森が
薄く薄くスライスされたわたしの標本
わたし、わたしじゃなければいいのに
俺?

ビッグバンの話


丈夫で
抜いてあげないと
すぐに漲るそれに



よくみえない日に


ぼんぼりの浮島なんて
どうして覚えられたの





どれもそぐわない春に



滲まないのがわたしで
滲む火に焦がれていて
滲む視界を愛していて   、
パノラマの屋根は全然滲んでなかった 気がついた

それで今霧散する季節を息を止めて待っている
その先が永遠みたいな湯の中でも








花筏の紐を切って 乾いて浮いて

(無題・小文)

水だか雲だかの境と
乾いたふりの上手な緑が
私か誰かのかたち

んせおに

布団のなかでもくもくと文のかたちを気づかれないよう薄目で見るのが静かに好きだった気がする。

空気越しの宇宙は死にそうに羨ましいけど

敏く光る雲
せめて目を刺す太陽

そしてはち切れる花茎
染まない花弁

だって盆地の子だもの

全部欲しい

どの窓もわたしの部屋じゃない

(無題)

阿蘇と小国の山肌
空の盾



海胆の風景


湿った未来くん

大船のもらうた

この数年間、わたしは確かに家を実感していたはずなんだけど、見たことしか覚えてない夢のように今は空に絶望している。わたしのかけがえのない絶望

新しい話

来年になってもわたしたち こうして

浮いて
透明で

このままなのでしょうか
途方もなく遠い 昔に
ホームセンターの前で見た
おでんのタッパーを持った金髪の少年 白い息
中年のジャンパーの襟 乾燥したベンチ

どんなに年をとっても
色褪せたままの幅の広い羽目板
隠せる階段の奥に
ひょうが横たわっていたの
わたしを愛しがって 会いたがって 呼びよせて
でも空を見て寝ているそこへ すいばりに気をつけて すねに痣をつけて わたしが
よっていきました

ずっとずっと優しかったです
目尻が美しかったです
ここは東京 恵比寿です
湿気に曇ったガラスの向こうに、天井まで届く大きな濃い葉
へその緒をつなぐのに夢中
わたし みえるのかなあ

三つ子の魂

軽石の崖で
鉄管の手すりで
手放し前回りを見てもらいたいの、わたし

誤解の幸福

この世界で写真を撮ったら負けな気がして
だからサンダルの裏で雨が粘る音
雨か波かの粒
丸の縁どり
紅すぎる紅
ガラス越しのボーダーも
そこに置いておいても
わたしは忘れないから
ね、お母さま

頭も

子どもの頃のわたしは、美術より音楽のほうがかっこいいと思ってた
世界に参加したかった
でも世界に気づかなかった
誰かの人生にBGMを鳴らして生きたかった
わたしのドラマは誰かの人生でいい

口下手嘘八丁

ねえ、二つずつ灯った外廊下も、毎日同じメールも、百万本のLEDライトも、
ねえ、擦りガラスの向こうに湿気を帯びた天井に届く大きな葉も、小さな一千万世帯も、
ねえ、工場がね、背の高い原色の看板が、ドーナツ型のモールの駐車場が、球場のぼやけた大きい光が、川が、堤防が、
ねえ、わたし今瞳で見てるよ

心臓の形

谷底の滑らかさに気を取られている

ごめんね誰か

風呂の底を抜いたら本当は深かった。
巨大なギプスの足が風呂桶の壁に穴あけて爪先差し込んでた。
配管だらけ。

肉がつかないまま化石になった胎児がたくさん。

たぶん絶対見た、それは、

さようなら神様、
わたし後ろ向きに滑って行くよ。

武蔵小杉の高校 もういないシャツとおかっぱをずっと見ている

少しだけの夢

海胆の水槽
肘 二の腕
私と別個の水、触れない熱
そよ風
昼間の光
丘の、坂の、途中の
シャッターの下りたコンクリート箱と
何かの箱と、短いのれんと、赤焦茶のチェストと、銀の台所と、
寒くない 暑くない
ショルダーバッグも、ウォーキングシューズも、遠くに見るだけ、
音のしないはこのなか
暑くない 寒くない 微風
海胆の水槽の前に
不思議と一人で
わたしはいつも不思議と一人で
安心して背中で見ている
腐っても、腐らせても、怖くない水と熱
肘、二の腕、髪の毛、頬骨
海胆の水槽

大袈裟

一人だけの総合芸術

思い出

アロエの肉
オレンジの皮
黄色い砂
小魚にフナムシ
超音波
おがくず
海
電話の忙しい声

運河の潮

坂を 下ってくる ヘッドライトが ちょうど 美しい 時間
潮目だけの平らなグラウンドと同じ色の校舎
降らないのに傘
肩掛けの2WAYバッグ
魚の頰の高速道路
ここになら住む理由がある

見えない海

わたしには思い出も覚えもない分、よっぽど恋しい風景だと思った

(無題)

中央分離帯で小雨の中傘をささずに片足とキャリーケースに体重を預けて立つスーツの背中、その襟元の細い白までがわたしで、わたしに見えるのはせいぜいその程度

せんはしゃしん、いろはご

赤児の目が離れぬうちに布団に縫い付けてねお母さん

わたしは、わたしと目が合っているいまの貴女のお嬢さまの表情も窓の外の色も光もその膝裏も、(この言葉によって)忘れないと思います。

(無題)

煩悩の数だけトケイソウを数えて

生を受けた

わたしは13歳のときにも、今年の3月11日も、それから今までの間も、日々を記録していました。

だし、知覚していた。 一番好きな人が死んだ日も、他の人が傷ついた他の日も、二人暮らしをしている今日も、わたしの目がそれを見ています。

恋人は嘘を吐き

唾だらけの銀は揺れても落ちないで
反射して盆地は妬けて
さようなら
見回せば山だらけ
たいそうこころづよい
城
のように思ってたけど
山を越えるとき彼女は
ああ入っていくのだと思ったと
そこは大名の土地
で
お外の海ではない
って本当かしら
本当。彼女の
わたしは見回す限り
限りなく見渡せる土地に
慣れてきたのかもね
夜道も怖れずかよったり
布団の腰にもぐったり
天井に這う虫をみて
ドアをあけて
麻痺して しないで

平野は八合目。
カウントは辞めて